top pickup sound youtube text link

 

おひさしぶりのホームページ更新を機に、さっそくリーダー格の白谷喜三雄さんよりお叱りのメール、大作のコメント文を頂きました。反省の意も込めて、頂いたメールを以下そのまま載せさせて頂きます。このコーナー『WISストーリー』もいよいよエンディングに近くなってきました。この機会にvol.1から13まで読み返すのも良いかもしれません。
どうぞお立寄ください。vol.1はコチラから (WISホームページ管理人)
http://www.koperniks.com/wis/book/
=================

学生時代のバンド仲間を話のネタにWISの物語を書くなら、リスペクトしてイージーな直観を極力抑えた心構えで、と望みたい。
WISストーリーはノンフィクションだけど、記録に元づく…ではなく記憶に元づくソレだから。
WISストーリーの時代、私たちは怖いものなしで、ある種の傲慢、突破力も備えていたけど、振り返って書く今は書かれる側も書く側も、世間で会社で家庭で揉まれ、子を育て、納税義務も果たし、配下の人生をも守る分別を身につけ、常識人と云う衣を着て、市井のヒトになっている筈だ。
そして、みんな老境にあって「いろんな事を乗り越えて70歳過ぎまで生きて来た」のだから、それだけでもリスペクトに値する、と私は思う。
古来より稀な長生き…「古稀」だよ。大袈裟だが「他人について書く」のは言葉を使う作業で責任を伴う事だし、何らかの媒体で残るのだからね。下手すりゃウン十年も。
一人ひとりの経緯を知れば知ったで自分と合わせ鏡の気持ちも入るし、やっぱりリスペクトが要る、と私は思っている。またそう在りたいとも思っている。
当時は若者だからね、世間は住み心地が良くないと思っていたし、同年代だらけの中に居たら自己主張したくなるのは自然で、ちょっとだけアウトローで危険人物かも知れないが、そんなフラストレーションを多少音楽が出来るワザのおかげでWISに集まって一緒にPerformance を愉しんだよな。
「何か世の中が変わりそう」とか「音楽上で何かが起こりそう」と期待感や面白さもあったし、その中心にいる…とまではノボセてはいなかったけど、卒業する先の自分の姿をどんな形にするのかとか子供には考えが及ばない「一身上の大問題」について、卒業の時限と才能の限界にらみで揺れる心模様のままムズムズして、ロードムービーさながらの毎日だったような気がする。
映画の「イージーライダー」や「ウッドストック」も「いちご白書」みたいにドロップアウトするには勇気が要るから、踏み出せないなー、なんてウジウジしていたところだ。
自問自答の毎日だったな。脆い自分も同居していたし。

言葉は大事だなとつくづく思う。
物語の中で、自分が漏らしたと云われる「ベースのノリも悪いし、シンコペーションができない」からって、随分偉そうな言葉を口走ったもんだと思う。
ましてコレを「誘引の口説き文句」に使うなんて、紳士にあるまじき最低さ、だ。せめて、音楽スタイルが合わないので…くらいは云えなかったのかな。云った当人は忘れているが、云われた方はキズを負ったに違いない。
幽霊部員…云々のクダリもそうだ。お役人様が使う、まさに忸怩たる思いがする青春時代だ。若さとは、誠に恐ろしい。卒業後の進路について悩む心情を、いまなら汲みとって書くだろう。
この他称幽霊部員はコンテスト後に姿を消し、一方のセンスが認められる部員は学外の活動も通して、就職か音楽家になるかと悩む。この作家さんは「姿を消し」たり「雲隠れ」がお好きだが、姿を消すのは卒業が迫るからこそ離れ難いからこその行動に違いない。学資の提供者から宣告されていた期限付き約束だったとか、継承で美容師になる約束でバンドを愉しんでいたとか、先にプロの音楽家になっていた兄と両親の関係を子供として、弟として見聞きしての考えだったろう。
当人の夢と子の将来を思う親や学資提供者の意向が何となく見えてきて、離れ難く、捨てきれない何かだからこそ、あえて距離を置いて離れた…のかな、とか、いまなら心の揺れを推測〜邪推だよね。余計なお世話で〜してしまうのも歳の成せるものなのかもね。ドラマの見過ぎかも知れないが学生生活の終盤は大きな転期に違いなかった。
親になった今でこそ想像できる/解る、親の気持ちなのだが、結果はどうであれ、その時にはちゃんと大人に向いて応えていたのだろうかな。
読み進むと、鬼籍に入った親の小言も思い出すね。

60年もズーット音楽を聴き続けていると、あの人…この人…好みのアーティストの演奏スタイルも全体も印象が変わる。ヘー、こんなプレーをするんだとかね。アマチュアだってそうだ。アーティストが変化を続け、今のスタイルも好きだ…と思うのは、自分の感性もアーティストと一緒に変わって来たって事になるのかも知れない。
仲間を育てるなんてオコガマシいよ。知見も指導力も吹奏楽の経験すら無くて、単に音楽とバンド好きなだけ。
自分で自分の感性を磨いて自分のスタイルが固まるから、ある方向の音楽が演れる創れるのだと思う。
たくさん興味を持って、たくさん聴いて観て、感性を磨いた結果だよね。
他称幽霊部員は、将来のカリスマ美容師をイメージして自分を演出していたのだ。単に大人ではなかったからフリが板に付いてなかったってことかな。
「雲隠れ」は、普段、連絡を取り合っていたのに、いきなり連絡が取れなくなったことを云うのではないか。最近の国会議員K夫婦の行動にこそ当てはまる言葉だ。意味をちゃんと理解して不用意に使わないことを、今後も自らも戒める。大学の軽音は色々背負って来た者たちが寄った場所。早慶、叶わぬならせめて六大学の何処かでジャズる事を夢見た、しかし滑りまくって二次募集でココに漂着した者。最初からココが志望校で幸せに遊ぶ者。特殊能力を活かして専門家になる名門音大生も仲間入りして来る。
「来年、ドコソコをもう一度受験する」と入学を不本意と云いきった一人は、雀荘に入り浸っていたり。…入学したての学生の闇や光からの外見は様々に不揃いで、内面は新聞部の心情左系や、スポーツ一途からの転向者、学生生活を早々に諦観してしまった者など。そんな方向も信条もバラバラな者が、目いっぱい愉しめたのはジャズ、R&B,ソウルミュージックの賜物だったのだね。
始めて会って音を合わせて、何だか狙った音が鳴った時の高揚感と一体感。一期一会と思いながらかれこれ50年も続くなんて。ノンフィクションを続けて書いて、HomePageもメンテナンスしてくれるなんてこの上なく感謝している。それも無償でね。

私は今でも、年齢がベラボーに離れている者同士のバンドを愉しんでいる。このご時世だから音合わせがノビノビになってるけど、合わせるのが待ち遠しい。老若から指摘されたりアイディア貰って愉しんでるんだよ。一緒に音を出すのが好きで止められない。最近はチカ〜ノラテンファンクにチョッと色気を出しててね。
あと何年、一緒に遊んで貰えるのかねー。(白谷三喜雄:Walking In Space)